1 概要

これから、交通事故の損害賠償請求の考え方を説明します。

 交通事故の当時者となった場合、直接事故の相手と交渉する場合や、相手の加入する任意保険会社と交渉する場合もあろうかと思います。その際、被害者が負ったけがの程度や後遺症によって、どのように損害を算定し、加害者に請求できるのか知っておいたほうが交渉の際に、相手の言い分が適切なのか判断できるかと思います。

 以下に説明する内容は、主に裁判実務で採用されている考え方です。もちろん、裁判手続きによらず、示談交渉で加害者や保険会社に請求する場合にも参考にできるものとなります。一般的には、裁判所基準に比べて、自賠責保険や任意保険会社の算定基準は少額になる傾向がありますので、裁判所基準に基づく考え方は、被害者救済に資することにつながるように思います。

2 積極損害について

治療関係費

●治療費と入院費
 必要かつ相当な範囲で実費が認められます。

●症状固定(※)後の治療費
 原則認められませんが、例外的に認められる場合があります。
※「症状固定」とは、これ以上治療を継続しても改善が見込めない状態のことをいいます。

●個室使用料
 医師の指示がある場合、症状が重篤な場合、空き室がなかった場合など、特別な事情がある場合に限り、相当期間認められます。

●整骨院・接骨院の利用
 医師の指示の有無などを参考に、相当額が認められる場合があります。

入院雑費

●入院雑費
 1日当たり1,500円

交通費

●入退院・通院の交通費
 実費相当額が認められます。
 タクシー利用は、けがの程度などから判断されます。
 自家用車利用は、1km当たり15円程度です。

●近親者の付き添いなどの交通費
 原則認められませんが、例外的に認められる場合があります。

付添看護費

●入院・通院の付添看護費
 医師の指示があった場合や症状の内容・程度、年齢などから必要性を判断されます。

 職業付添人:必要かつ相当な実費

 近親者付添人:入院付添6,000円(1日)
        通院付添3,000円(1日)

将来の介護費

●職業付添人
 必要かつ相当な実費                    

●近親者付添人
 常時介護の場合:8,000円(1日)
 随時介護の場合:介護の必要性に応じて相当な額

装具・器具購入費等

●購入費
 
車いす、義足、電動ベッド等の購入費は、けがの程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認められます。

家屋改造費等

●家屋改造費、自動車改造費、転居費用等
 
けがの程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認められます。

葬儀費用

●葬儀関係費
 
150万円   

3 消極損害について

休業損害

●算定方法
 休業による損害が分かっている:実損額
 分かっていない場合:基礎収入×休業期間

●基礎収入
 給与所得者:現実に喪失した収入額
       事故直前の3か月の平均収入を使用
       有給休暇取得した場合も損害とされます
 事業所得者:現実に収入減があった場合認められます
       事故直前の申告所得額を基礎とします
 会社役員 :労務提供の対価部分のみ認められます
 家事従事者:学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎とします
 無職者  :労働対価を得ていない場合休業損害は認められません

後遺障害による逸失利益

算定方法
 基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

基礎収入
 給与所得者、事業所得者、会社役員      
      :休業損害の場合に準じます
       若年者の場合は、学歴計・全年齢平均賃金を基礎とする場合もあります
 家事従事者:休業損害の場合に準じます
 幼児、生徒、学生
      :学歴計・全年齢平均賃金を基礎とします
       大学への進学の蓋然性があれば、大学卒・全年齢平均賃金を基礎とします
       年少女子は男女全労働者の学歴計・全年齢平均賃金を用いることができます
 無職者  :就労の蓋然性があれば認められます(基礎収入は失業前の実収入等を考慮)

労働能力喪失率 

障害等級実働能力喪失率障害等級実働能力喪失率障害等級実働能力喪失率
第1級100/100第6級67/100第11級20/100
第2級100/100第7級56/100第12級14/100
第3級100/100第8級45/100第13級9/100
第4級92/100第9級35/100第14級5/100
第5級79/100第10級27/100

労働能力喪失期間
 始期:症状固定日
    未就労者については、原則18歳、大学進学等の場合、就学終了予定時とします
 終期:67歳まで
    年長者は、67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長いほうとします
    ※むち打ちの場合 第12級程度 5年から10年
             第14級程度 3年から5年  に短縮されます

中間利息控除
 民事法定利率(2020年4月1日以降の事故:3%)の割合で控除します
 計算方式はライプニッツ方式によります
 控除の時期は症状固定時とします

死亡による逸失利益について

算定方法
 (基礎収入-一定割合の生活費)×ライプニッツ係数

基礎収入、就労可能年数、中間利息控除
 後遺障害逸失利益に準じます

生活費控除率
 一家の支柱及び女性:30~40%
 その他:50%

4 慰謝料について

死亡慰謝料

●基準額
 一家の支柱:2,800万円
 その他  :2,000~2,500万円

 事情により増額または減額される場合があります。

入通院慰謝料

算定方法
 入通院期間を基礎として、別表の基準に基づきます
 「通常」と「重傷」の表があります
 「重傷」とは重度の意識障害が相当期間継続した場合、骨折又は臓器損傷の程度が重大である場合など適用します

実通院日数と通院期間の計算
 通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合は、実際の通院期間と実通院日数を3.5倍した日数とを比較し、少ないほうの日数を基礎とします

軽度の神経症状 
 軽度の神経症状(むち打ち症で他覚的所見がない場合など)の入通院慰謝料は、通常の慰謝料の3分の2程度とされます

入通院慰謝料(通常)
入通院慰謝料(重傷)

後遺障害慰謝料について

等級1級2級3級4級5級6級7級
慰謝料額2,8002,4002,0001,7001,4401,2201,030
等級8級9級10級11級12級13級14級
慰謝料額830670530400280180110
(単位:万円)

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