1 はじめに

 まったく法律に関係がないのですが、最近、事務所の通信回線をアップデートしまして、コストダウンをしつつ、通信環境の改善を実現することができましたので、ご紹介する次第です。個人事務所や少人数の小規模事業者さんであれば、参考になるかもしれません。

 なお、私は、ITスキルが高いわけではありませんので、設定や接続に誤解があるかもしれませんので、その点はご容赦ください。

2 これまでのシステム構成

 従前、事務所不在時などに、外出先でも事務所の固定電話番号でスマホから発着信できるサービスとして、クラウドPBXを利用していました。クラウドPBXの導入に際して、V6プラスの通信回線では対応できず、IPv4の契約が必要とのことで、V6プラスと固定IPアドレスの契約を併存する構成も検討し、クラウドPBX事業者やプロバイダーにも相談しましたが、正常に稼働しないリスクが高いという判断となり、結局、利用していたV6プラスは廃止し、IPv4専用回線として契約変更しました。当時、私が調査した限りにおいて、個人や小規模事業者向けで、V6プラス環境下で利用できるクラウドPBX事業者は見当たりませんでした。

 この状態で、3年以上利用していましたが、ネット回線の速度が低下しやすいのと、IP電話の品質が不安定な場合があり雑音も入りやすい状況で、推奨されているIP電話(固定電話)も外国製で機能的に不満があるものでした。

 なお、コスト面(税込)ですが、

 クラウドPBX+秘書代行サービス(100コール) 22,000円

 通話録音サービス                  3,300円 

 という状況でした。契約当時は電話コール数100件がミニマムの契約でしたが、改めて確認すると、現在はミニマムの契約でコール数30件のプラン(12,210円)もあり、変更すればコストダウン可能だったようです(契約中、そのような案内はまったくなく気が付きませんでした。。)。

3 更新後のシステム構成

 上記のような不満なところもありましたので、ネット環境を改善したいと思いながら、V6プラスとクラウドPBXや電話転送サービスの検索で情報を調べていたところ、「テレワープ」の記事が目に留まりました。そこには、V6プラスの環境で利用できると紹介されていました。

 利用制限として、ひかり電話契約があり、NTTのホームゲートウェイ(HGW)の利用が必須とのことで、その条件はクリアできていましたので、早速、システムの更新を検討しました。

 V6プラス回線とする場合、NTTのHGW(PR-500KI)では、ルーター機能が対応しておらず、別途、V6プラス対応のルーターが必要とされていたことから、ルーターも新規に購入しようと考え機種を調査しました。光回線終端装置(ONU)も兼用できるひかり電話対応ルーター(ヤマハNVR510等)も検討しましたが、「テレワープ」の利用制限でNTTのHGWの利用が必須であったことから、既存のHGW(PR-500KI)の利用を前提に、V6プラス対応のルーター(ヤマハRTX830)を選定しました。従前使用していたV6プラス対応のルーターも所有していましたが、構成上、そのルーターはブリッジ設定でwifi用のアクセスポイントとして利用する必要がありましたので、少し古い機種ですが口コミで高評価だったヤマハRTX830を採用しました。ネットで探せば定価よりだいぶ安く購入できるかと思います。

 「テレワープ」用の機器(「テレキューブ」と呼ばれる小型の機器)をLANケーブルでHGWに接続するだけで、HGWのIP電話の情報が自動で設定(スマホに固定電話の発着信を転送するための設定)されるので、HGWの利用が必須とされているのかもしれません。試していませんが、自分でIP電話の設定ができるのであれば、もしかするとNTTのHGWの利用は必須でないのかもしれません。

 ヤマハRTX830は、設定は日本語GUI機能があるので、基本的なところは分かりやすい操作が行えますが、細かい設定を行おうとすると、マニュアルでコマンド入力が必要となり、親切なユーザーが設定方法を解説してくれているサイトを参照しながらなんとか作業する感じでした。

 「テレワープ」の接続構成は、HGWがルーター機能を持っている場合は、HGWにLANケーブルで「テレキューブ」をつなげるだけで機能しますが、HGWではなくHGWの支配下にルーターを設置する場合は、HGWとルーター双方に「テレキューブ」を接続する必要があります。すると、ここでいくつか問題が発生します。まず、HGWのルーター機能を停止させるには、HGWのDHCPv4サーバーの機能を停止させ、RTX830のルーター機能のみ有効にします。そのままLANケーブルを接続しただけでは、RTX830の下流に接続した機器からHGWにアクセスができなくなりますので、HGWのLAN側のアドレス「192.168.1.1」として(「テレワープ」を利用する場合、このIPアドレスにした方が無難のようです。)、RTX830のWAN側(192.168.1.254)、LAN側(例:192.168.0.1)とすると、RTX830の下流からもHGWに接続できるようになります。

 また、「テレワープ」のQAなどでは、HGWのDHCPv4サーバー機能を有効にするようなアドバイスが出ているのですが(https://telwarp.co.jp/trouble/)、HGWとRTX830で二重にDHCPサーバーが機能することになると通信が不安定になるようで、思うように動作しませんでした。また、ネットの接続環境もV6プラスではなくなってしまうようで、途中、V6プラス接続の確立もだいぶ苦労しました(IPv6接続のみ、IPv4接続のみとなったり、V6プラスの利用ができていないなど。)。

 また、「テレワープ」がうまく稼働できずあきらめかけていた時に、「AGEPhone」のような無料アプリでの設定もチャレンジしてみたのですが、内線電話(同じwifiの接続範囲)としてスマホを使用するのであれば、外線から接続するための設定が不要なので比較的容易なのですが、外部から固定電話番号で発着信を行うという設定は、VPNでの固定IPアドレスの設定など、私にはハードルが高いものとなりお手上げでした。。他の方が実践していたRTX830のWAN側のIPアドレスの指定とPPPoE接続設定の並存というのが(https://hobby-server.com/rtx830_ipv4_ipv6/)、GUI機能ではできず、私には設定できませんでしたので(WANやLANの設定方法はとても参考になりました。)、結局、「テレワープ」をどうにか利用できるよう試行錯誤しました。

 話を戻しまして、「テレキューブ」の片側の配線はHGWに接続して、もう一方の配線をRTX830のLANポートに直接接続してもなぜか「テレキューブ」を認識しないことがあり、試行錯誤の結果、さらに下流のブリッジ接続しているwifiのアクセスポイントで、接続したところ、うまく「テレキューブ」が認識されるようになりました。その際、アカウント設定などすべて完了し、スマホで発着信できるところまで確認できました。ところが、2,3日経過したところで、再びスマホから発着信ができていない状況となりました。このため、「テレキューブ」と思われる機器(HGWの内線電話に自動設定される情報からMACアドレスが分かります。)のIPアドレスを固定(例:192.16.0.235)したところ、オンライン状態も安定しました。

 そのほか、従前のシステムと同等以上に仕上げるため、不正アクセスや情報漏洩などの対策のため、UTMを導入しました。以前から、パソコン上でのファイアウォールやウィルス対策だけでなく、ハードウェアでの安全対策も気になっていたところでした。ルーターの出口にブリッジ接続するだけの簡単な設置で、機能も一般的なサービスと同等以上でしかも非常に安価な契約(5年分割で月5,800円)のPico-UTMというものを採用しました。競業のサービスと比較して圧倒的なコストパフォーマンスを感じています。

 また、秘書代行も変更になりましたので、従前利用していた業者さんと再契約しました。この業者さんは、迷惑電話や営業電話はノーカウントにしてくれるので、契約コール数が少なくても十分対応できるかと思います。30コールで月8,800円の契約です。PBX事業者の場合、内線扱いで電話代行事業者への転送費用は無料でしたが、こちらに戻すと転送にはNTTの転送電話契約が必要になります(月550円)。

 迷惑電話対策も取り入れました。これまでは、クラウドPBXのWEBアプリ上の着信拒否リストに営業電話などの番号を逐一登録していく感じでした。これも契約が無くなりましたので、「トラビフォン」という固定電話回線に接続できるサービスを利用しました。オンライン接続することで、事業者側の保有する迷惑電話のリストが機器に反映されますし、自分でもWEB上のアプリで迷惑電話のリストを作成でき、自動で着信拒否の音声が流れ接続を拒否してくれますし、着信時に相手の名前を表示させることが可能です(液晶画面が小さくカナ表記で少し読みにくいです)。料金は、機器が10,780円で、二年目以降、年間3,960円です。

 あとは、電話録音ですが、音声データを自動で、電子ファイルで記録して管理したかったので、VR-D179Aを採用しました。同じ機能を持った録音装置というのが他に見当たらず、まあまあの値段でしたが、現状、想定とおりの使い方ができていますし、音声の品質も問題なく良好です。

 すべて、想定とおりに稼働できるまで2週間程度かかりました。「テレワープ」の接続が一番苦労しました。GWの期間をうまく利用できたので、事務所運営には影響ありませんでした。当初は、PBX事業者に復旧作業もお願いしようと思っていたのですが、5万円程度かかってしまうのと、おそらく専門業者でも設定は容易ではないしRTX830まで熟知しているわけでもないので、お断りして、すべて自分でセッティングしてどうにか無事に稼働できたというところで、苦労話を書かせてもらいました。

 初期購入費用はある程度かかりましたが、維持管理費コストの削減もできた上に、安全性の向上と通信速度の改善(4~5倍の速度はでるようになりました)は十分に目的を達成したかと思います。このシステムで従前と比べて、唯一対応できていないところは、テレワープ利用時のスマホからの発着信の際には通話録音ができないというところだけです。

 ご参考まで。

 従前の維持管理費

  PBX+秘書代行 22,000円

  録音サービス    3,300円

   合  計    25,300円

 更新後の維持管理費

  秘書代行      8,800円

  テレワープ     1,980円

  転送電話        550円

  トラビフォン      330円(月換算)

  UTM       5,800円(5年契約)

   合  計    17,460円